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探求のリベレイト!第二十八話「ヒト」

2012.11.12 22:23|探求のリベレイト!
探求のリベレイト!
Twenty eighth Mission:“Hominid”  by R-YA&ふぇいすふる






 依然として空は雲に覆われ、どこまでも黒かった。
だが朝がきているのか、あたりはもはや単純な闇ではなく、しんしんと降り積もる雪が辛うじて視認できる程度の暗さであった。数十年前に捨てられた小さな町は、しんと静まり返っている。雪は地面を白く染め、その無地に暗がりを呼び込み続けた。
 そのような幻想的な光景の中に、激しく動き回る二つの影。
それは巨大な人型兵器、AWだった。人類の叡智とも、愚行の象徴とも言えるもの。そう指し示すように、灰色の機体は傷だらけで、装甲は吹き飛ばされ、ねじれ、焼かれていた。黒い機体も無傷と言うわけではなく、整備士に言わせれば「似たり寄ったり」の状況であろう。その姿からは、この二機、そして彼らが守るその主、ジンとファラーの激戦ぶりが伺える。

 刃がぶつかり、火花が散る。
 KEコーティングをしたデカルトブレードⅡでさえ、数時間槍とぶつかり合った当然の対価として刀身を削られ始めていた。だが《アーケディアン》の槍は、どういう原理かは想像できないが、折れるような気配を感じさせていない。
 涙は枯れはて、喉は乾き、思考がおぼつかない中でも、ジンは攻撃を続ける。全ては生き残るためであった。生きなければならない、と感じていたからだ。
 ぼろぼろになった刃を敵機に叩きつける。《アーケディアン》は左腕で受けるが、ついに負荷に耐えかねたらしく装甲がひしゃげた。同時に《オミニッド》の胸部に槍がつき刺さり、電磁結合が追いつかなくなった第三層の装甲が完全に崩壊する。
《アーケディアン》が後退し、《オミニッド》から距離をとった。リーチにおいて絶対的なイニシアチブを持つのは剣ではなく槍だ。複雑な軌道で槍が数回繰り出されるが、全身のスラスターを同期させたステップとブレード捌きで弾く。だがそのうちにブレードが真中からヘシ折れた。
それでも彼は折れた剣で突撃する。雲が立ちこめる空のように何もわからぬ思考の中でも、ジンには敵と戦う方法だけははっきりしていた。
 生きていれば、きっと死んだ人に報いることができる未来がある、とただ祈って戦う。
 それは本当に正しいのであろうか?




    *




 ロシア支部奪還作戦は成功といえた。
 作戦開始時間0230から約二時間は、補給部隊との連携をうまくとりつつ、じりじりと敵防衛ラインを下げ続けた。そんななか、別の地域での任務を行っていた“フレイムウルフ”の通称で知られる第一特殊部隊が到着。
 そこで攻勢は一気にUNOAT側に傾いた。
 第一部隊はオールラウンドの遊撃隊にして、UNOATの中でも超がつく精鋭が集まった部隊である。中でも隊長のゴダイ・マツカワはワークスやエティに引けをとらない射撃・格闘技術をもち、ガルムと同等の回避技術があり、若くして戦闘指揮の才能を開花させつつあるジェイをしのぐカリスマ性をもつ、いわば完璧な男なのである。
 そのような第一部隊と、戦線の中心となっていた第四部隊が共同して《プロト・メデュセナ》をどうにか押さえる間、ゴダイが前線で指揮をとることにより戦況は一変した。
 アルカへスト側は完全に時間稼ぎの防御態勢に移行し、後方支援用のクラフトの脱出を確認した後に撤退。残っていた物資などは全て持ち去られ、その地域だけをUNOATに残す結果となった。


 『TD3、それは第一の方だって言っているじゃないですか!こっちじゃないです!まっすぐ行って左曲がればすぐですから!』
 作戦を終えたパイロット達を待っていたのは休息ではなくAWを用いての力仕事だった。もともと作業用としても高い能力を持つのがAWであったから、敵の手によって奪われた物資の施設内への再搬入や、破壊された自動砲台の再設置のような仕事には持って来いなのだ。パイロット達は不平をいいつつも、施設のシステムをある程度取り戻さなければそこで休むことはできないと知って作業を続けた。
 無論それはワークス達にとっても同じであった。先ほど第一格納庫に搬入すべきものを第二格納庫に持っていってしまったワークスは、彼の愛機を歩ませながらたまたま同じ方向に機体を向けていたエティに話し掛けた。
「おい、なんか聞いたか?」
『いや、全く。姿も見ないし、やっぱり…』
「そうか。アイツ、死んでねえだろうな…」
 アイツとは、いうまでもなくジンのことであろう。
 不安げに、ワークスはどこまでも暗い空を見上げた。




    *




 派手な金属音がその暗い空に鳴り響いた。
 《オミニッド》のブレードが今度は根元から砕けたのだ。再度繰り出される槍。左腕の電磁結合装甲で真っ向からそれを受け止めるが、蹴りに吹き飛ばされる。轟音をあげて着地した灰色の巨人が民家を叩き潰し、その衝撃波が雪と泥をまき散らす。
 彼らは戦闘を続けるうち、戦場を小さな集落へと移していた。もともと山の多い地形で、意外と高度がある土地だ。ただ、住民はどこか都会に移り住んだのか、命の感じられないその様はどこか空虚だった。
 《オミニッド》と《アーケディアン》が、地面をえぐりながらお互いに接近する。青い光と共に《オミニッド》が拳を繰り出すが、すでに《アーケディアン》は回りこんでいた。左肩のスラスターを破壊されながらも旋回して、黒い機体を蹴りとばす。《アーケディアン》は民家を幾つか巻きこんで破壊しつつも態勢を立て直し、雪煙をあげて再度走り迫る。赤と青の光が幾重にも交錯し、その度に火花が散り、装甲が砕けた。
 両者が近づく。何度目ともわからぬ衝突。突き出された槍に対しバルカンを乱射しながら左腕をぶつける。左腕のバルカン複合型電磁結合小盾が一瞬で消し飛ぶ。その間にも《アーケディアン》のハイキックと《オミニッド》の右アッパーカットが交差して、次にお互いに背後を取り合うようにステップを踏んだ。だがやはり、武装の半壊した《オミニッド》が一歩遅かった。《アーケディアン》のステップの勢いに赤い光――NERFの力を付加した回し蹴りによって《オミニッド》が吹き飛ばされる。コックピットを守るためにフレームの位相転換と電磁結合が行われる。だが、膨大な電力消費によって、〈ホミニッド・モード〉ですら、到底エネルギーの供給を間に合わせられるものではなくなっていた。限界稼動時間が一分をきる。防御と擬似G制御にエネルギーをまわしたためにスラスターの逆噴射ができず、地面に衝突する。それでも勢いは止まらず、民家を数軒破壊し、雪煙を立てながら派手に地面を滑る。後方には崖があった。必死にもがき、直前でなんとか踏みとどまる。限界稼動時間は、あと5秒。態勢を立て直す。残り時間、4,3,2――





灰色の巨人が立ちあがる、最後の一秒間。




ちょうどその時、雲が動いた。鉛色の世界に光が降り注ぐ。



 

 ジンは全身が鳥肌をたてるのを感じた。
 ペダルを踏みこむ。スティックの全てのスイッチを押しこみ、全力でスティックを引く。
その瞬間、《オミニッド》の増加装甲が弾け飛んだ。鉛色の装甲を脱ぎ捨てて現れたのは、あまりに白く、美しすぎる機体。光に照らされて雪と共に白く輝く、一点の曇りもない幻想めいた姿。そう、《オミニッド》はすらりとしたフォルムに白銀のきらめきをもつ、ジンの愛機の姿を取り戻したのだ!
 電力を消費していた装甲がなくなり、《オミニッド》のエネルギーが回復していく。光の瞬くその機体は異常な跳躍能力で跳ねると、光の尾を引いて、光そのものの速さで黒い機体に迫った。その手には、膝の収納スペースから取り出したショート・プラズマブレードが握られている。
 だが、一瞬にして超高速機動をするようになった《オミニッド》に、ファラ―の技術と思考はついていくことができた。《アーケディアン》が赤い光をまとって飛翔し、槍をつきだす。直撃コースだった。


青と赤の閃光が光の速さで互いに迫る。


 ジンは景色がやけにクリアに、明瞭になるのを感じた。ほんの一瞬のできごとが、 とても長い時間に感じられる。そこでは、NERFの力も機体の性能差も関係がない。憎しみも哀しみもない。それは、ただの一瞬のできごと。
 槍が迫る。敵機はまだ自機のリーチにいない。方向微調整。到達した槍が頭部横の空を貫く。次いで左拳が繰り出される。自機の左腕で掴み、慣性の方向へ敵機を引く。すれ違った。慣性で流れる自機を回転させる。敵機は未だリーチ内で背を向けている。ブレードを振る。そして。




光と闇だけが支配する雪上で、白と黒が交錯した。




《オミニッド》は、ただ悠然と着地する。その背後で、《アーケディアン》が二つに分断され、崖の下に投げだされた。

それだけだった。




    *




 どれほどの時間、じっとコックピットに座っていただろうか。だがそのような時間を過ごしてもまだ、ジンを包む虚無感は消えない。それは一年ほど前、初めて戦った時に感じたものと同じであった。
 ペダルを踏みこんで《オミニッド》を崖のそばまで歩かせ、そこで機体を停止させる。ハッチを開けて、立ち膝の姿勢の《オミニッド》から、雪の降り積もる地面に降り立った。
 冬の風はひどく冷たく、それが通り抜けるたび、ナイフで斬られているかのような感覚に襲われる。雪はかなり降り積もっているようで、歩き出すとブーツが幾数センチ埋まった。
 崖から山の下方を見下ろす。予想以上の高低差があり、黒い機体を発見することはできなかった。発見できたからと言って、どうするつもりも彼にはなかったが。
 振り返ると、そこには一面の銀世界と、白く明るい空と、風景に溶け込む《オミニッド》の姿があった。彼らの戦いの跡はすぐに真っ白な雪に覆われて、どこか空々しい美しさをつくりだしていた。
 遠くから、ヘリのローターの音が聞こえた。




    ***




 それからのことは、ジンは良く覚えていない。どうにか発見されてロシア支部に帰ることができた、とか、整備班やリリー、ワークスや他の第四部隊の面々に会った、などといった漠然としたことしか記憶にない。どんな言葉を交わしたかすら覚えていなかった。ただ、自分が五日前使っていた部屋のキーとなるカードを何時の間にか持っていたから、会話はできていたのだろうな、と推測できるばかりである。
 パワープラントが潰された割には、通路は暖房がきいてほのかに暖かかった。慌ただしい戦闘の後ろくに清掃もできなかったからか、ペンやらなにかの書類やらが散乱していた。そんな道を歩いて五分ほどで自分の部屋の前に行きつく。別段自分の部屋に行って何をしようというわけでもなかったが、部屋に行くこと以外にやろうと思えることはなかった。
 扉の横の無機質な四角い箱にカードをあてると、ピ、という電子音がなり、扉がスライドした。部屋にあったのはベッドとそれを覆うカーテンと、彼が寝ていたソファだ。そのソファの上には、ちょこん、とマイが座っていた。それは見なれた光景のはずだったが、ジンにはなぜかそれを最後に見たのは遥か昔のように感じられた。
 マイがジンを見て、おかえり、と言った。少し座る位置を調整し、スペースを開ける。それが座っていいよ、という意思表示であることは、今のジンにも分かった。だから、素直にそれにしたがって、やわらかいソファに腰かけた。
 そうすると、さまざまなことがフラッシュバックした。空になっていた心に、黒い雨が降る。

 生きて帰った。
 だが、どうだろうか?
 結局、自分がしたことと言えば、また人を一人殺めただけだ。
 何も残っていない。自分はまた奪ったのだ。かけがえのない、命を。

 自分の不甲斐なさに、涙がこぼれる。生き残った先にあったのは、希望ではなかった。償いなどはなかった。ただ、人を殺したという罪が、彼の首を締めあげていくだけであった。

 そんなジンを、マイはただ、ぎゅ、と抱きしめた。少女のからだはただ暖かかった。その暖かさがジンの胸に溢れて、それが涙となって次から次へとこぼれ出た。ジンは声をあげて泣いた。それは彼が今まで溜めてきた、さまざまな思いだった。そしてなにより、自分を受け入れてくれる人がいるという安心感で、涙はとめどなく溢れた。

 人間は、どうしようもなく弱い生きものだ。どれだけ明晰な頭脳をもっていようが、どれだけ魔法のような科学技術を発達させようが、些細なことで傷つく心は強くはならない。他との関わりあいのなかで傷つき、苦しみ、悩むのは、仕方のないことだ。

 それゆえ人は、この少年のように、心の拠り所を求める。矛盾をはらんだ自分でさえも包み込んでくれる、そのような暖かさを求める。そうすることで、崩れそうになる心を保っていく。否、人間はそうすることでしか、自分という存在を保つことができないのかもしれない。

 だから今はきっと、少年はその暖かさに心を預けていていいのだろう。今は、少女の優しさに、その抱擁に身を任せていてもいいのだろう。

 今は、それでいい。



 
 今は。





Tragedy continues...

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R-YA&ふぇいすふる

Author:R-YA&ふぇいすふる
ロボット大好きの二人組。
イラストも描きます。
ガンダム、BIONICLE、アーマードコア、フルメタ、ブレブレ、ラインバレル等、好きなロボットは多岐に渡ります(笑)
仮面ライダーも好きな奴らです。
現在小説は修行中です!

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